ある日、ポストに一枚のお知らせが入っていました。
「次期の理事にご就任いただきます」

えっ、私が理事?
何をすればいいの…
マンションの理事が回ってきたと知ったとき、多くの方が同じ反応をされます。
私は不動産業界で35年働き、いまはマンション管理の仕事をしています。
マンション管理士と管理業務主任者の資格を持ち、理事会に毎月立ち会う側にいます。
その立場から、正直にお伝えします。



結論から言うと
思っているほど大変ではありません
この記事の結論
- 任期は1年から2年が多く、回ってくるのは10年に1度くらい(戸数による)
- 理事会は月1回・1時間ほど
- 決めるのが管理組合、動くのが管理会社。実務は管理会社がやります
- 建物のことが分からなくても大丈夫。説明するのが管理会社の仕事です
- 断れる管理組合もありますが、これからは「引き受ける」が前提になっていきます
理事の任期と、実際にかかる時間
まず、一番気になるところからお答えします。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 任期 | 1年から2年が多い |
| 回ってくる頻度 | 10年に1度くらい(マンションの総戸数によります) |
| 理事会の回数 | 月に1回 |
| 1回あたりの時間 | 1時間ほど |
総戸数が多いマンションほど、順番が回ってくる間隔は長くなります。
逆に、戸数の少ないマンションでは数年に一度ということもあります。
月に1時間。それが理事の基本的な負担です。



思っていたより
少ないかも…
理事は実際に何をするのか
決めるのが管理組合、動くのが管理会社
ここが一番の誤解ポイントです。
管理会社は、あくまで管理組合を主体として、その業務をお手伝いする立場です。
だから議案の最終決定は、総会や理事会で管理組合が行わなければなりません。
そして決まったことを実際に動かすのが、管理会社の役割です。
| やること | 担当 |
|---|---|
| 清掃・修繕の手配 | 管理会社 |
| 会計事務・お金の管理 | 管理会社 |
| 資料の作成・説明 | 管理会社 |
| 何をするかを決める | 管理組合(理事会・総会) |



専門知識は要りません。
判断していただくのが
理事のお仕事です
理事長だけの、大切な仕事があります
理事の中でも、理事長には特別な役目があります。
管理組合の印鑑を預かることです。
なぜそんな仕組みになっているのか。背景をお話しします。
マンション管理士や管理業務主任者という資格ができたきっかけは、管理会社が管理組合の通帳と印鑑を一緒に預かっていたことだと聞いています。
両方をひとつの手が持っていると、使い込みや持ち逃げができてしまう。実際にそうした事件が増えたそうです。



そんな事件が
あったのね…
では理事長が両方持てばいいのかというと、そうではありません。理事長側で問題が起きたケースもありました。
そこで、通帳と印鑑は別々に管理しなければならないという決まりができました。
私の会社では、通帳は管理会社が保管し、管理組合の印鑑は理事長に持っていただいています。
お金を出す必要があるときは、必ず理事長から印鑑をいただく仕組みです。
両者の目があれば、悪いことが起きる可能性はぐっと低くなります。



印鑑を預かるのは
そういう意味があったのか



理事長は見張り役。
大切な役目なんです
理事は断ることができるのか
正直にお答えします。
年齢や身体の事情で断ることができる管理組合もあります。
ただし、私が管理しているマンションでは、輪番制の順番は必ず受けていただいています。
もし区分所有者ご本人が難しい場合は、同居しているご家族や、別の方を立てていただきます。
冷たいように聞こえるかもしれません。理由をお話しします。



これは私の
正直な考えです
断る人が増えると、マンションが回らなくなるからです
高齢化が進んでいます。
「高齢だから」という理由を認め始めると、やがて誰も引き受ける人がいなくなります。
みんなが高齢者になる社会だからです。
だからこそ、できる形で関わっていただく。
それがマンションを守ることにつながります。
管理組合が機能しなくなったマンションがどうなるかは、マンションが廃墟化する原因とは?で実例を紹介しています。
【本音】実際、どれくらい大変なのか



建物のことなんて
何も分からないのに
務まるのかしら
大丈夫です。理由をお話しします。
分からないことは、管理会社が説明します
私が管理しているマンションでも、理事になられるのはご高齢の女性が多いです。
正直なところ、建物のことはよく分からないという方がほとんどです。
だからこそ、私たち管理会社が説明します。それが仕事だからです。
「こういう理由なので、こちらのほうが良いと思います」とお伝えすると、たいてい納得していただけます。



聞けば教えてくれるなら
安心だわ
揉めることは、ほとんどありません
意外に思われるかもしれませんが、理事会で大きく揉めたことはほとんどありません。
たいていは、リーダー的に意見をおっしゃる方がいて、その流れで話が進みます。
もちろん反対意見が出ることもあります。
そのときは管理会社から補足の説明をすると、納得していただけることが多いです。



会議というより
報告と相談の場。
そんな雰囲気です
理事をやって「良かった」と言う人もいます
最後まで憂鬱なまま終わる方ばかりではありません。
「やって良かった」とおっしゃる方がいます。理由は共通しています。
自分のマンションのことが、よく分かるようになるからです。
今まで興味のなかったこと。分かりにくかったこと。
管理会社である私から詳しく説明させていただくうちに、少しずつ関心が出てくる方がいます。
そして、こう変わります。
今まで他人事だったことが、自分自身の問題なんだと理解してもらえる。



自分の資産のことだもの
知らないままは
もったいないわね
修繕積立金がいくら貯まっているか。
次の大規模修繕はいつか。
こうしたことを知ると、「このまま持ち続けるのか、それとも」という判断もできるようになります。
その視点についてはマンションの売り時は修繕積立金で決まるにまとめました。
一番大事なのは、管理会社との信頼関係です
ここまで読んで、お気づきかもしれません。
理事の負担が軽いかどうかは、管理会社しだいだということです。
きちんと説明してくれる管理会社なら、専門知識がなくても務まります。
資料を投げてくるだけの管理会社なら、理事は苦労します。



管理会社で
そんなに違うの?
ありがたいことに、私が管理しているマンションでは信頼していただけている方が多いと感じています。
だから「こういう理由でこちらが良いと思います」とお伝えすると、話がまとまります。
良い管理会社を選ぶこと。そして信頼関係を築くこと。
これが、マンションを長持ちさせる一番の近道だと思っています。
管理会社の選び方はマンション管理会社の役割と選び方で解説しています。
よくある質問
Q. 理事会を欠席したらどうなりますか?
A. やむを得ない事情での欠席は、多くの管理組合で認められています。
議事録が配られますので、内容は後から確認できます。



無理のない範囲で
大丈夫ですよ
ただし毎回欠席が続くと、決議に必要な人数が足りなくなることがあります。
できる範囲で参加していただけると助かります。
Q. 理事に報酬はありますか?
A. 管理組合によって異なります。
報酬がない場合もあれば、少額の役員報酬を定めている管理組合もあります。
ご自身のマンションの管理規約に書かれていますので、確認してみてください。
Q. 賃貸で住んでいる場合も理事になりますか?
A. いいえ。理事になるのは区分所有者(部屋の持ち主)です。
賃貸で住んでいる方は対象になりません。
ただし、部屋を人に貸しているオーナーの方には順番が回ってきます。遠方にお住まいでも同じです。
まとめ
- 任期は1〜2年、回ってくるのは10年に1度くらい
- 理事会は月1回・1時間ほど
- 決めるのが管理組合、動くのが管理会社。実務は任せて大丈夫
- 理事長は印鑑を預かる見張り役。通帳と分けるための仕組み
- 分からないことは管理会社が説明します。揉めることもほとんどありません
これだけは覚えて帰ってください。
理事は「押し付けられる面倒ごと」ではなく、自分の資産を知る機会です。
マンションは、住んでいる人みんなで守るものです。
順番が回ってきたら、少しだけ前向きに受け止めていただけたら嬉しいです。



分からないことは
遠慮なく管理会社に
聞いてくださいね
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