「マンションの終活」の最終地点といってもいい「敷地売却」
つまりは区分所有者全員がお部屋を業者に売却、マンションの敷地だった土地も売却して「区分所有を解散」します。
「みんな今までありがと~!私たちは解散します!」
昔のアイドルグループを思い出しますね(笑)
区分所有者全員で「管理組合」というグループを作って、力を合わせて何十年も一つのマンションを維持管理してきました。
設備が傷ついたこともあった。
天井から水が漏れたこともあった。
時には意見がぶつかったこともあった。
でも最後はみんな笑顔で解散できるのが理想ですね。
しかし、この「敷地売却」に関しても手間のかかる手続きが必要なのです。
今回はこの「敷地売却」について解説していきます。
とうとうそれぞれの道を歩むことになりました
マンション敷地売却制度とは?
マンション敷地売却制度とは、既存のマンションの取り壊しを行い、その敷地を売却することで各区分所有者に分配金・補償金を配分する制度のことをいいます。(平成26年の建替え円滑化法改正で設定)
これまで老朽化したマンションのたどる道は、区分所有者ら全員の合意が原則必要だったため
①大規模修繕などで維持 もしくは ②建て替え、この二者択一でした。
そこに時間的にも手続き的にも区分所有者にメリットのある③敷地売却という選択肢を広げて、いわゆる「マンションの終活」の幅が広がりました。
マンション敷地売却制度は区分所有者のうち区分所有者数と議決権個数の5分の4以上の賛成で区分所有関係の解消が可能となります。
マンション敷地売却制度の対象となるマンション
マンション敷地売却制度の対象となるマンションは、耐震性が不足している要除却認定を受けたマンションです。
単に老朽化しているというだけでは、マンション敷地売却制度を用いることはできないことに注意です。
理由としては、マンション敷地売却制度は、昭和56年の建築基準法施行令改正(新耐震基準が定められた)の前に建築された耐震性の不足したマンションの建替えを促すことを趣旨としているからです。
耐震性不足以外にも、火災安全性の不足や外壁などがはがれ落ちる危険性のあるマンションや、住宅における生活の基本的条件であるインフラに問題があると認められる(配管設備腐食等・バリアフリー不適合)マンションといった4類型が追加されました。
マンション敷地売却制度の目的
マンション敷地売却制度は、マンションの敷地を売ること自体が目的の制度ではなく、耐震性に問題のあるマンションの建替えを促進することを目的とする制度です。
マンション敷地売却制度は、耐震性の不足が原因で、建替え後のマンションの再取得につき合意が見込めない場合を想定して定められた制度なのです。
マンション敷地売却制度を利用する方が良いマンション
改修や建替えよりもマンション敷地売却制度を利用した方が良いのは次のような場合です。
- マンションの建替えを行っても要求される改善水準を実現できない
- 建替えても十分な戸数が確保できない
- 建替えで住戸面積が縮小してしまう
- 区分所有者の高齢化が進み仮住居での生活や引越しに不安がある
- 建替えまでの時間が待てない
- 建替える場合の負担金や仮住まい費用の捻出が難しい
- 借家化が進み区分所有者の建替えへの関心が低い
- 借家人の権利調整がなかなか進まない
相当な費用の負担、最低2度の引越しをすることの抵抗感、関心の低さ、権利関係の調整などの理由で建替えが難しい場合はマンション敷地売却制度を利用する方が合意形成が進む可能性があります。
マンション敷地売却制度のメリット
マンション敷地売却制度の最大のメリットは、居住者の状況、分配金額等を考慮して、各居住者が再建したマンションに入居するか、他の住宅に住み替えるかを自由に選択できるという点です。
従来から建替え円滑化法によって定められている権利変換制度(※)と異なり、マンション敷地売却制度は、集団的な意思決定に係る合意形成をしなければならない場面が少ないのです。
例えば、マンション敷地売却制度は、権利変換制度とは異なり、再建築物の区分所有権の帰属が事前の決議事項となっていません。
マンション敷地売却制度では、分配金や補償金があるため区分所有者の権利調整がしやすくなっています。
多数決や認可によって売却や建替えをスムーズに着実に進めやすいのです。
※権利変換制度とは、従来より建替え円滑化法で定められていた、区分所有権をはじめとするマンションに関する法律関係を再建したマンションに移行するために用いられる制度です。
マンション敷地売却制度の利用の注意点
①原則として「建替え」や「改修」との比較の中で検討することが望ましい
最初からマンションの敷地売却ありきで話を進めると納得できない区分所有者さんが出てきます。
きちんと皆さんが納得できるように話を進めていきましょう。
②組合内での情報の共有や意見交換をして、総会等での決議により意思決定を行い進める
耐震性不足の認定や買受計画の内容は区分所有者の権利や財産に大きな影響を及ぼします。
具体的な法手続きに入るには総会を招集して、合意の上手続きに入ることがトラブルを未然に防ぐために重要です。
③建替え以上に意思決定の手続きや分配ルールについて慎重に合意形成を進める
資産評価やその分配などで利害関係が対立しやすいため、中立な専門家の関与など慎重に進めていくことが大切です。
とにかくみんなで情報を共有してよく話し合うことが大切です
④行政への事前相談や専門家の導入など合意や法手続きを客観化する仕組みを作る
課題の早期発見や利害の調整、区分所有者が納得できる過程を踏むことなど含めて、行政への相談や専門家(※)の導入や活用は絶対に必要です。
※専門家とはマンション管理士、不動産鑑定士、弁護士、司法書士など。
マンションの終活は専門家に入ってもらうのが良いでしょう
敷地売却制度の進め方
①準備・検討・計画
専門家を活用し、管理組合内で話し合い、修繕・改修か建替えか売却かの比較検討を行います。
②行政認可手続き
管理者の申請で耐震診断の結果により特定行政庁が「耐震性不足の認定」をします。
買受人(デベロッパー等)がマンションの買受・除却代替建築物の提供・あっせんの計画を申請し、都道府県知事等の認定を受けます。
(要除却認定、買受計画認定等の行政認可)
③マンション敷地売却決議
総会を開き、計画案に基づいた敷地売却について(売却の相手先・売却代金・分配金の算定方法)の賛否を確かめます。(敷地売却決議)
区分所有者数、議決権および敷地利用権の持分価格の 各5分の4以上の賛成を得られたら敷地売却の実施の決定です。
④マンション敷地売却組合設立
決議合意者等の4分の3以上の同意で、都道府県知事等の認可を受けてマンションおよびその敷地の売却を行う「マンション敷地売却組合」を設立します。
この「マンション敷地売却組合」がマンション敷地売却決議の反対者からの敷地の買収、「分配金取得計画」に基づく区分所有者等に対する分配金の支払いなどの業務を担います。
「マンション敷地売却組合」はマンションの敷地の権利を取得し、買受人(敷地の買受計画について都道府県知事等の認定を受け、敷地のディベロッパーとなる者)にその敷地の権利売却を実施します。
⑤分配金の支払い
行政の認可に基づいて区分所有者全員への分配金を確定(分配金取得計画認可)し、支払います。
担保権付きの区分所有権に係る分配金は、区分所有者に支払わずに供託し、担保権者が物上代位できるることにします。
借家権者は期日までに補償金を取得します。
再入居希望者は、買受人との間で個別に再建マンションを購入すれば、再入居を行うことも可能です。
再入居を望まない場合には、分配金等を元手として、他の住宅へ住み替えることになります。
⑥引越し
居住者は期日までに建物からの退去しマンションを明け渡します。
⑦デベロッパーへの売却
「マンション敷地売却組合」がマンションと敷地の権利を取得します。
(期日において個別の権利が「マンション敷地売却組合」に集約し、担保権・借家権は消滅します。)
買受人(デベロッパー等)へ土地・建物を売却・引渡後、解体工事・新築工事をデベロッパーが実施します。
⑧敷地売却の完了
全て完了です。
新しいマンションへ再入居される方、他の住居へ入居される方、それぞれの道を歩んでください。
本当にお疲れ様でした
マンション敷地売却制度のまとめ
14年改正の「マンション建て替え円滑化法」で新設された「マンション敷地売却制度」
この制度は、耐震性不足で取り壊してしまわないと危険なマンションを除却して、新しい建物に再建築することを目的としています。
そのため総会の議決の賛成数や建替え時の容積率を緩和して話し合いを進めやすくしています。
マンション敷地売却制度を利用して「マンションの終活」の選択の幅を広げることができることに期待します。
廃墟化するマンションを減らして安心で安全な町づくりができるように頑張りましょう。
マンションの終活は話し合いが本当に大切です。
色んな案を出し合ってより良い選択ができますように!
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