マンション管理会社のフロント歴25年の私が、今一番気になる話題が「マンションの終活」です。
いきなりの質問です。
- あなたは自分が所有するマンションの将来をどう考えていますか?
- このままマンションにずっと住めると思っていますか?
- 突然の修繕費用や建物の老朽化に不安を感じたことはありませんか?
- もしあなた以外の人が全員「このマンションを建て替える」と言い出したらどうしますか?
いきなりの質問、失礼しました。
普段改めて考えていないことを急に尋ねられると戸惑いますよね。
実際、フツーに住めていて、フツーに生活していて、フツーに過ごしていたらマンションの将来のことを考えることはないと思います。
しかし、この世の形あるものはいつか壊れますし、朽ち果てるものです。
マンションも例外ではありません。
ご高齢の方は「私が亡くなるまでこのマンションに住めたらそれでいいわ」とおっしゃる方がいます。
「もうこんな歳だから新しい試みなんて無理」と言いたくなるお気持ちはわかります。
けれど、マンションという「区分所有の建物」を所有した限り責任があるのです。
厳しいですが、年齢は関係ありません。
残された他の人たちや、そのマンションを相続したお子さまたちはどうなるのでしょうか?
何も知らされず相続してしまったために大変なことになった事例もあります。
そこで、マンションを所有している方におすすめしたいのが「マンションの終活と長期修繕計画」の取り組みです。
今回の記事では、マンションの終活の意味やメリット、そして長期修繕計画の進め方や必要性について詳しく解説します。
自分が所有するマンションの将来を考えてみようと思う方は、ぜひ最後までお読みいただき、マンションの価値を守り抜くための知識を身につけてみてください。
マンションの資産価値を守るためにとても大切なお話です
マンションの終活って何?
「マンションの終活」とは、今所有しているマンションを最後にどうしたいのかを区分所有者全員で話し合って行動していく取り組みです。
①可能な限り長くマンションを維持する
②建替え
③区分所有の解散(敷地売却)
大きく分けると「マンションの終活」はこの3つの中からどれかを選ぶことになると思います。
どれを選ぶにしても、所有者同士の話し合い・住民の協力・多くの資金が必要になります。
なぜマンションの終活が必要なのか
マンションは永遠に存在するものではありません。
形あるものはいつかは壊れてしまうのです。
鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は47年とされていますが、現実には丁寧な維持管理をすれば、60年以上でも住み続けることができます。
放置して廃墟化させるのか
マンションの最後を自分たちで決めるのか…
大きな違いですよね
「マンションの終活」は大きく分けて次の3つの中から選択することになります。
①可能な限り長くマンションを維持したい
マンションを少しでも長く維持して、このままずっと住み続けるためにはマンションの老朽化に伴う問題を解決しなければなりません。
そのためには修繕積立金を定期的に見直す必要があります。
マンションを長く維持するには、計画的にお金を積み立てて、定期的に修繕していかなければなりません。
②新しいマンションに建替えたい
古くなった建物を取り壊し、マンションを新しく建替えたい人もいるでしょう。
最新の設備を投入して戸数を増やして余った部屋は売却して資金に。
尚且つ、自分も新しくなったマンションに再び住むには、それが可能なマンションであるかの確認と資金が必要です。
③敷地権を売却して移住したい(区分所有の解散)
マンション全戸を売却し、敷地を売却して区分所有の解散をしたい人もいるでしょう。
この場合には、建物の取り壊し費用の捻出や、新しい住まいを探す必要があります。
どの選択をするにせよ、区分所有者全員の承諾が必要ですし、資金が必要です。
それらは簡単なことではありません。
長い話し合いになりますし、お金を積み立てるにも時間が必要です。
ですので「マンションの終活」はできるだけ早くから取りかかることをおすすめします。
人間もマンションも
「終活」は切羽詰まると
ろくなことはありません
長期修繕計画って何?
マンションの長期修繕計画とは、建物を長く維持できるように、定期的にチェックして必要な修繕を計画的に行うことです。
例えば、外壁の塗り直しや屋上の防水工事、エレベーターのメンテナンスなどです。
これらの修繕や補修を計画的に行うことで、マンションを長く維持することができます。
また、マンションの価値を保ち、住み続ける人たちが快適に暮らせる環境を整えることもできます。
毎月積み立てている修繕積立金の額が正しい額なのかもわかります。
将来不足するようであれば修繕積立金額の変更を考えなければなりません。
そのための資料になるのです。
長期修繕計画は30年程度の
修繕計画や収支をまとめた計画表です
なぜ長期修繕計画が必要なのか
長期修繕計画が必要な理由には以下のようなものがあります。
- 建物の老朽化や劣化を防ぐため
- 住民の安心と快適さを確保するため
- 経済的に効率的であるため
- 老朽化による廃墟化を防ぐため
建物の老朽化や劣化を防ぐため
建物は、時間とともに劣化していきます。
長期的な視野で建物の状態を管理し、修繕作業を行うことで、老朽化や劣化を防ぎ、建物の寿命を延ばすことができます。
住民の安心と快適さを確保するため
建物の劣化は、住民の安全や快適さにも影響を与えます。
長期修繕計画を立てて、外壁の塗装や防水工事を定期的に行うことができます。
雨漏りや壁のカビなどを防ぎ、住民が快適に過ごせる環境を作ることができます。
屋上のコーキングが劣化して
すき間から雨漏りした実際の写真です
防水シートは生きていてもすき間を埋めるコーキングが劣化してしまうことがあります。
真下のお部屋の壁にカビが出ていました。
屋上のコーキングを新設することで雨水の侵入をふせぎ、カビは取り除いたうえで新しい壁紙をはって補修しました。
経済的に効率的であるため
長期修繕計画を立てることで、修繕作業の予算を計画的に立てることができます。
長期的に計画を立てることで、修繕作業を効率的に行い、経済的にも急な負担を軽減することができます。
修繕するお金が不足していると
急に一時金を徴収されるケースもありますよ
老朽化による廃墟化を防ぐため
建物の老朽化や劣化が進行すると、建物が使い物にならなくなってしまいます。(廃墟化)
建物が廃墟化してしまうと、その周辺の地域の景観や住環境にも悪影響を与えることがあります。
長期修繕計画を立てることで、建物の老朽化や劣化を防ぎ、廃墟化を防止することができます。
長期修繕計画の進め方
マンションの維持管理について必要となるのが、長期修繕計画です。
長期修繕計画に沿ってマンションの修繕をします。
長く住み続けるには必要不可欠です。
長期修繕計画は、マンションの老朽化を防ぎ、住環境を改善するための計画であり、法律によって義務付けられています。
ここでは、長期修繕計画の立て方と進め方について解説します。
長期修繕計画の立て方
専門家の選定
長期修繕計画の立案には、建築士や修繕業者などの専門家の知見が必要です。
信頼できる専門家を選定し、協力を仰ぎましょう。
建物の調査
建物の構造や設備、劣化状況などを調査し、現状を正確に把握します。
調査の結果をもとに、修繕すべき箇所や優先順位を決定します。
長期修繕計画の策定
修繕すべき箇所や優先順位をもとに、修繕計画を策定します。
修繕計画は、修繕箇所や修繕時期、費用などを明確に記載した書類としてまとめられます。
区分所有者の合意形成
長期修繕計画には、区分所有者の合意が必要です。
修繕計画の内容や費用について、十分な説明を行い、区分所有者の理解を得ましょう。
長期修繕計画の進め方
- 定期的な点検とメンテナンス
- 資金の確保
- 進捗管理と報告
- 業者の選定
- 住民への周知
定期的な点検とメンテナンス
長期修繕計画に基づき、定期的な点検とメンテナンスを行いましょう。
点検の結果をもとに、修繕の必要性や優先順位を見直し、長期修繕計画を改訂することも必要です。
長期修繕計画は5年ごとに見直しするのが
推奨されています
資金の確保
長期修繕計画に必要な資金を確保することも重要です。
修繕積立金の額が正しいものであるか、もし将来的に不足しそうであれば金額を変更する等、区分所有者への説明や周知にも力を入れましょう。
所有者みなさんに納得してもらうのが
大変な作業なのです
進捗管理と報告
長期修繕計画の進捗状況を管理し、住民に報告することも大切です。
定期的な報告を行うことで、住民の理解や協力を得られる場合があります。
きちんと報告することで
住民のみなさんに自分も
関わっていると思ってもらうことが大切です
業者の選定
修繕作業は、専門的な知識や技術が必要です。
信頼できる業者を選定し、作業の進捗状況を確認しながら、適切な指示を行いましょう。
数社に見積もりをとって
選ぶのがおすすめです
住民への周知
修繕作業が行われる際には、住民に事前に周知することが必要です。
作業日程や作業内容についての説明、騒音や振動などの影響についての配慮を行い、住民の不便を最小限に抑えましょう。
実際に住んでいる皆さんが
協力的だと
工事もスムーズに運びます
マンションの終活と長期修繕計画の関係性
「マンションの終活」と「長期修繕計画」の関係性について
「マンションの終活」と「長期修繕計画」は、共通する目的を持っています。
長期修繕計画は、マンションの終活においてかかせないものです。
そのため、マンションの終活を進める際には、長期修繕計画をきちんと把握しておくことが必要です。
マンションは、建物の老朽化に伴い、修繕工事をする必要があります。
大規模修繕工事は、外壁にシートをかけられてうっとうしいこともありますが、定期的に外壁のクラックを補修しないと躯体がダメになるのです。
屋根やベランダの防水工事も定期的に補修しないと雨漏りの原因になります。
長期修繕計画に基づいて必要な修繕や改修を早期に実施することで、マンションの寿命を延ばすことができます。
また、終活の前にマンションの売却を考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、その場合でも建物や設備の老朽化が進んでいると、資産価値が低下してしまうことがあります。
そのため、長期修繕計画に基づいて、必要な修繕や改修を実施することで、資産価値を維持することができます。
長期的な視点でマンションをメンテナンスすることで、住まいの寿命を延ばし、資産価値を維持することができるのです。
「マンションの終活」を通じて、建物の現状を把握し、「長期修繕計画」の策定や修繕費用の見積もりに役立てることで、住民の生活環境を守り、安心で快適な共同生活を送ることができます。
マンションの終活と長期修繕計画のまとめ
今回は、「マンションの終活」と「長期修繕計画」について解説してきました。
それぞれの概要や、必要性、具体的な実践方法やメリットについて紹介しました。
「マンションの終活」とは、マンションを最後にどうしたいのかを区分所有者全員で話し合って行動していく取り組みです。
①可能な限り長くマンションを維持する
②建替え
③区分所有の解散(敷地売却)
大きく分けると「マンションの終活」はこの3つの中からどれかを選ぶことになりますが、多くの資金・所有者同士の話し合い・住民の協力が必須になります。
その話し合いをするために「長期修繕計画」は必要な資料なのです。
修繕が不十分だと、マンションの設備や構造に問題が生じ、建物自体が老朽化し、価値が低下してしまう可能性があります。
ひどい場合は廃墟化してしまいます。
これら2つの取り組みは、密接に関係しています。
マンションに住む人たちは、これらの取り組みに積極的に参加し、共にマンションをより良い場所にしていきましょう。
長期修繕計画は自分の人生設計にも関わりますね
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